うちの ねこ神様

ねこと暮らす日々のこと。

はづき のこと。エピソード10。

はづきは、最期まで立派だった。

そして美しくて、格好良かった。


最期まで自分の足で歩き、はづきがお気に入りだった場所(良くいた場所は、おそらくお気に入り)、全てを巡った。

何度も、何度も。


用事をして少し席を外した後、戻るとさっきの場所にいない。

焦って探すと、別のお気に入りの場所にいる。

夜中うとうとして目が覚める度に、はづきが居なくて探すと・・・別のお気に入りの場所にいる。

私の膝の上にもちゃんと来てた。

写真はあるけど、パジャマだから載せない(笑)。

大切な、私だけの写真・・・。



これが最期かも・・・と思って、毎日写真を撮った。

はづきを写真に残したかった。

痩せたはづきを見るのは辛かったけど・・・。辛そうなはづきを見るのは辛かったけど・・・。


一番しんどくて辛いはづきは、凜としてた。はづきの周りの空気だけ澄み渡ってるような。

こんな時に使う言葉ではないかもだけど、「凜」としていた。

はづきの”生きる意志”のような・・・”生き様”なのか”死に様”なのか・・・。

立派だった。格好良かった。

何度でも言いたい。


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2019年10月20日  ソファーの背もたれのクッションの上。この場所もお気に入り。

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10月20日  3ニャン一緒の最後の写真。並び方、こんな時でも守ってる。

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10月21日  食器棚の一番下の引き出しを自分で開けて奥に入るのが好きだった。

食器がいっぱい入ってて重たいのに・・・良く引き出しを開ける力があったね・・・。


はづきのお気に入りの場所は、はづきのいつも居た場所は、はづきにとって居心地のいい、大切な場所だったんだろう。

きっと、お気に入りの場所に、一つ一つ、お別れの挨拶に巡っていたのかな・・・。

はづきの想いがその場所にとどまっているような気がする。

”忘れないで”って・・・。


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10月21日 朝7時  息子の胸の上で。

上の写真が、はづきが生きている最期の写真になる。

もう、血液が十分に回らないんだろう。耳・手足・鼻先は冷たくて、紫色になってきていた。

最期の時が近いのは分かった。

温めてあげたいと、息子が抱いて眠った。はづきは、じっと胸の上にいた。

温かかった?・・・ねぇ、はづき。


この日、私は仕事だった。

翌日は「即位の礼」で祝日。仕事は休み。

あと1日・・・いや、仕事が終わるまで待ってて・・・。

「はづき、大好き」そう言って顔を寄せて、仕事に行った。

もう、何度も何度も言ったその言葉を、はづきに伝えたくて・・・。


息子が、なんとか都合を付けて、はづきの側にいてくれた。

昼休憩中、息子から電話があった。

よほどのことがないと仕事に行ってる私に電話をしてこない。急変したと思った。

電話の内容は「緑色のものを、かなり大量に吐いた」。

おそらく胆汁が混じっていると思った。もう、腸が動いてないんだろう・・・。

息子に、どういう状態か説明して、はづきを頼んで「なるべく早く帰る」と電話を切った。

残された時間はあとわずかだろう。「間に合わないかもしれない」そう思った。


この日に限って、残業だった。月曜日のうえ、翌日は祝日。予測できた残業だった。

「はづき、待ってて。私が帰るまで」心の中でずっと祈っていた。

仕事が終わり、帰り支度をしていると、携帯が鳴った。

息子から「今、はづきが死んだ・・・」と。

息子は泣いていた。

私も泣いた。


泣きながら家路を急いだ。

すれ違う人は驚いたと思う。

いい年したおばさんが泣きながら歩いてるんだから。

今思うと恥ずかしいけど、その時は人目なんか気にならなかった。


19時30分過ぎ、家に帰る。

はづきは、まだ温かかった。

身体も柔らかくて、生きてるんじゃないかと思ったけど・・・もう息をしていなかった。

亡くなる少し前、いつも帰りを待ってるリビングのドアの前にいた、と息子が教えてくれた。

待っててくれたのに、ごめんね、はづき・・・。

待っててくれて、ありがとう、はづき・・・。


最期はソファーに座る息子の横で、眠ったまま静かに逝ったと。

ドアの前でじっとしているはづきを、ソファーに連れてきた息子。

横で眠るはづきが息をしているか何度も確認した。そして、何度かめには息をしていなかった、と。

本当に、静かに逝ったんだね、はづき。


緑色の嘔吐物の跡は床やソファーや椅子の上に残っていた。

息子が拭いてくれたが、跡が残ってる。

大量に吐いたことがよく分かった。

苦しかったんだろうね・・・・。

溜まっていたもの全て出して、少しは楽になって逝けたんだったらいいな・・・。


みんな仕事があるから、最期の時に側にいられないかもと思っていた。

「私が帰るまで、きっと待っていてくれる」と思っていた。勝手な考え方だ。

都合を付けてくれた息子に心の底から感謝した。

息子がいてくれるから、他の者は仕事に行けた。

はづきを一人で逝かせなくて良かった・・・。

側に家族がいて、安心できたよね、はづき・・・。



2019年10月21日 19時15分。

5歳1ヶ月と3日、はづきは虹の橋へ向う。



では、また。